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職人技の砂時計
砂時計は、職人さんがひとつずつ
ガラスを吹いて手作業で作っているんです。
どこか心惹かれる砂時計の魅力が
ここにありました。
かつては、様々な場所で使われていた砂時計。調理時間を計ったり、学校の授業でも使われたりと、懐かしい記憶が思い浮かびます。しかし現在は、キッチンタイマーなどが普及したことで砂時計を見かける機会は、すっかり減ってしまいました。
砂時計の形状は、大きく分けると、ぷっくり膨らんだひょうたん型と真っ直ぐのシリンダーのような形とがあります。特に制作に手間が掛かる方がひょうたん型です。今では、ひょうたん型の砂時計を作れる職人さんは、日本に3人しかいないと伺いました。そのお一人である東京硝子工芸の金子治郎さんに今回、取材をさせていただきました。
取材をする中で、砂時計の制作は、すべてが手作業であることを知り驚きました。職人さんがひとつひとつ丁寧にガラスを吹いて作っています。何でも機械化になっているこの時代に、砂時計は職人さんの技術によって作られています。そこにとても温もりを感じました。
「手作業でなければ出せない繊細な形が砂時計の持ち味なんですよ。」と語る金子さん。職人技の美しい砂時計が毎日の生活にあると、ホッとする時間ができて温かい気持ちになれますね。

砂時計職人のきっかけ
東京都葛飾区で45年、砂時計を作り続けている金子さん。金子さんのお父さんはガラス工場の社長であり、ガラス職人でした。当時は、理化学用のガラス機器や薬液を入れるアンプルの制作をされていたそうです。しかし、そのうちに機械技術が向上し、半自動でアンプルの制作ができるようになると、葛飾周辺のガラス工場や職人さんはどんどん去っていきました。
そんな折り、貿易会社からの依頼で輸出用の3分間のエッグタイマーを制作したのが、砂時計を作り始めたきっかけです。金子さんは、忙しいお父さんの手伝いをしているうちに、18才から砂時計を作りはじめました。
一番難しい「蜂の腰」
制作工程の中で一番難しい作業は、砂時計の命でもある「蜂の腰」と呼ばれる砂の通り道です。炎で加熱されたガラス管は、みるみるうちにくびれていきます。素早く息を吹き入れながら直径をどんどん細めて調整します。砂の通る直径は、1ミリ以下。でも細すぎてもだめです。長年の職人の勘で仕上げられます。

1.工房で砂時計を作る金子治郎さん。2.長いガラス管をバーナーで熱して、細長く伸ばした後、均等な大きさで切り分けます。3.砂を振るいにかけ粒子の大きさを揃えます。4〜5.ジリコンサンドや乾燥剤の砂など様々な種類があります。
砂の種類とこだわり
砂時計の砂は、基本的には砂鉄ですが、砂状のものなら大抵、砂時計にできるのだそうです。良く見かける青やピンクなどのカラフルな砂は、実は乾燥剤を細かく砂状にして着色したものです。
他にも金子さんは、自然砂、蓄光タイプの夜光砂、鋳物の型を取るための砂ジリコンサンドなど4種類の砂を扱っています。「砂時計用の道具自体が少ないから、無いものは自分で作らないといけないんですよ。ジリコンサンドの砂の色も染料を自分で調合して染めています。毎回同じ色に調合するのは大変だけどね。」と教えてくださいました。
砂によって使用用途が変わる
乾燥剤の砂は軽いので、高温の場所や熱が加わる所に置くと、砂時計内で空気が圧迫されて砂が落ちなくなってしまいます。だから、サウナにあるのは、重い砂鉄の砂時計なのです。
オーダーメイドの砂時計
東京硝子工芸では、砂時計職人さんだからできる砂時計のオーダーメイドも制作しています。 旅行に行った時の記念の砂や甲子園の土、大切なペットの遺骨まで、1つからオリジナルの砂時計を作ってもらえます。また、壊れてしまった記念の砂時計の修理も行っています。 暮らしの中で、アナログに時を刻む砂時計。落ちていく砂を眺めながら、リラックスする時間も時には必要ではないでしょうか。

6〜9.制作工程。常にガラス管を回しながら中心を熱して、くびれをを作っていきます。片方ずつ熱してガラスを吹きひょうたん型にしていきます。両方が膨らんだら「蜂の腰」を最後に仕上げます。10〜11.ガラスの片方を閉じ、砂を入れます。手作りの台に砂時計を並べ一斉に3分間計ります。余った砂は針金で真ん中の穴を塞ぎながら出し、最後にガラスを閉じます。15.できあがり!16.気さくに教えてくださった金子さん。

こだわりが作りあげる耳かき
耳かきは、さりげない存在ですが、
とっても奥深い世界がひろがっています。
種類やカタチや用途によって
驚くほど細かな工程がありました。
私たちの暮らしの中で、何気ない道具の中にも職人さんがこだわって作っているものがあります。例えば耳かき。耳かきを作る素材には、ステンレスやプラスチックなどの工業製品をはじめ、様々なものがありますが、昔から手で作られるものに竹があります。竹を素材に機械で作っている耳かきもありますが、竹細工職人がひとつひとつ丁寧に作った耳かきは、持った感触も良く、使用感が最高に心地良い耳かきに仕上がっています。何しろ竹自体が持っている、しなやかさと弾力性は、デリケートな耳の奥にも優しいのが特長です。
たくさんの用途に応える
「お客さんが、真剣に1本1本さじの部分の感触を手の甲で確かめて選んで買って行かれるんですよ。」とおっしゃるのは京都の二寧坂で竹細工店を営む三代目の神田智弘さん。なぜなら、耳かきのさじの部分だけでも種類と個性があるからです。さらに使うお客さんの好みも加わると多岐にわたり、奥深い耳かきの世界がひろがります。 まず、さじ部分の大きい小さいで、使う方々の好みが分かれます。また、さじ部分の曲がり具合で用途が分かれます。例をあげると、きつく曲がっていると「耳垢を取る」用に使い、曲がりがゆるいと「痒い部分をかく」用に使う。頻繁に耳かきを使う人は、さじの曲がりがゆるい方を使う方が多いそうです。
さらに、男性と女性の違いなのでしょうか。耳かきの柄の太さ形もそれぞれの好みに分かれます。非常に細かったり、横に平べったい形をした柄もあったりと様々です。ちょっとした耳かきと思いがちですが、個人の好みを追求していくと種々様々な耳かきの世界がひろがっているようです。
素材の竹による違い
その様な耳かきの好みを満足させてくれるのが、やはり昔から好まれている素材「竹」になります。竹にもいろいろと種類があります。今回、神田さんにお見せいただいた種類は「真竹」「虎竹」「煤竹」の3種類。「真竹」は、青い竹を油抜きして乾燥させた「白竹」の状態のものを使います。採れてからそれほど年数も経っていないので柔らかく、比較的耳あたりの良い耳かきといえます。「虎竹」は、虎のような模様がある竹です。柄の部分が広く平べったいのが特長です。「煤竹」は、囲炉裏の上などで長年燻された竹です。茶褐色で何とも味わい深い色をしており、この煤竹こそ最高級の耳かきになります。煤竹は、百年物、百五十年物と年数が経つほどに竹自体も貴重な耳かきとなります。囲炉裏などがない現代、この様な年代物の煤竹が手に入らないようになったそうです。

1.割った竹を剥いでいる作業中の三代目:光竹斎こと神田智弘さん。2.竹の種類。左から真竹。虎竹。煤竹(ひねりを加えたり、短くしたりと趣向を加えています)。一番右の3本は、最高級の煤竹耳かき。3〜4.耳かき作りの工程。5〜7.細かな耳かきを作っているところです。細心の注意を払い微妙に小刀を使っていきます。8.耳かきを作るにあたっての道具。伝統工芸の専用道具が大変美しい。
耳かきの様々な工程
さりげない存在の耳かきですが、ひとつの耳かきが出来るまで様々な工程があります。まず、素材の竹を割り、余分な肉を剥ぎます。さらに、さじになる部分を専用の道具で削り、熱を加えて曲げて、角張った耳かきのような形になります。それから小刀で丸みを付け、私たちが知っている耳かきの形に仕上げていきます。さじの部分は非常に小さいので、気を使う箇所です。耳かきの形になったら、今度は丁寧にペーパーをかけて仕上げていきます。このような細かな工程を経て、職人技と呼べる耳かきが出来上がります。
京都の伝統工芸
様々な伝統工芸が息づく京都。先々代から数えておよそ90年、竹細工店としてやってこられたのはひとえに「面倒くさがらずに、思ったことはやりとおすこと。」と、語る神田さん。この職人魂が、多くの人々の心を捉えていたと感じました。観光客の多い二寧坂で、竹の花かご作りから始まった神田竹細工店。数多くの竹細工を手がけながら、日本の伝統を引き継いでおられました。

9.二代目のお父様と三代目:光竹斎さん。10.さじの大きさや曲がりも様々。11〜15.花かご作りが出発点。粋な時計盤、御用達の花かご、お箸など竹細工もいろいろ。竹細工教室も行っています。4名から15名程度で一人2,500円。

職人さんが作る江戸木箸
箸は、人と食を繋ぐ命の箸渡しをする大切な道具。
だからこそ、握ってみて自分に合う箸を見つけてほしい。
私たちの暮らしの中に無くてはならない道具のひとつが箸です。箸は食べるための道具であり、生きるための道具でもあります。だから私たちの暮らしの中で、実はとっても重要な役割を果たしているのです。 「靴は履いてみて買うのに、なぜ箸は握ってみて買わないの?」という箸職人の竹田勝彦さんの言葉に衝撃を受けました。なぜなら、今まで使いやすさをそれほど重要だと思わずにいたからです。よく考えれば、足に個人差があるように、箸を使う手も人それぞれ。それなのに、箸は色や柄だけで選ぶことが多かったように思います。 大黒屋さんの江戸木箸を握ってみたときに、その握りやすさに「箸ってこんなに手に馴染むものなんだ!」とうれしくなりました。
使いやすい箸ってどんな箸?
今回お話しを伺ったのは、大黒屋のご主人で箸職人の竹田勝彦さん。店内にずらりと並ぶ箸は、200種類以上あり、すべて職人さんの手で作られています。 竹田さんに使いやすい箸とは?と聞くと、「握りやすくて、つまみやすい箸。」との答え。単純明快です。「本当に良い物は使ってみないとわからない。自分に合った良い物を選ぶにはたくさん比較しないと分からないでしょう? だから、使う人の身になって、そんな想いで作っています。」と気さくに応えてくださいました。素材が良い物、高価な物など『良い物』はたくさんありますが、例えば、とても素敵な洋服があっても、サイズが合っていなければ、その人にとっては着にくいし似合わない。だから『本当に良い物』とは言えません。自分の体に丁度良い物が『本当に良い物』なんです。
こだわり抜かれた江戸木箸
もともと食器問屋の営業マンだった竹田さんは「自分で使っている箸が使いづらくて、本当に使いやすい箸を作りたい!」という思いで20年ほど前に独学で箸職人に転身されました。
それまで箸といえば、断面が四角のものがほとんどでしたが、竹田さんは、箸は基本的に親指、人差し指、中指の3本で支えるから、角も奇数の方が持ちやすいに違いないと五角形の箸を考案しました。その後、2年をかけ七角という円周の360度を割り切れない角度の箸を作り上げました。機械では作り出せない、七角のバランスを職人の感覚だけで全く同じ形に作り上げていけるのは、まさに職人技。そして、角が指に触れないこの奇数の角の箸が不思議とピッタリ手に馴染むのです。

1.緊張感のある作業場の風景。分担作業ではなく、自分の作った箸は最後まで同じ職人さんが仕上げます。2.箸職人であり、社長の竹田勝彦さん。 3.左の2つが削る前の箸で右の2つが削った後の箸。角がきれいに出ています。
自分だけの箸探し
「良い箸を使うと食べ物も美味しくなるんだよ。」と語る竹田さん。小さな粒がスッと取れる、取りたい物がきちんとつまめる。そんな箸なら食べることに集中できます。つかみづらかったり、太すぎたり、細すぎたりすると、食べることよりも、つかむことに気を取られてしまいますからね。一般的に使いやすいとされる箸の長さは、手首から中指の先までの長さに3〜4センチプラスしたものです。そして「喰い先一寸」といわれる箸先3センチが、箸の最も重要な部分で、先が細い方が握る部分をあまり開かなくても箸先がピタッと合うので手が疲れないのだそうです。江戸木箸は、先端まで角がぴしっと入っていて、職人さんの魂が込められている部分なんです。
職人さんが想いを込めて手作業で作る箸は、使うたびに真剣な想いが伝わってくるようです。そしてどんな職人さんが作った箸なのか知ると、より一層愛着が湧いて大切に使いたくなりますね。
自分にとって使いやすい箸を見つけられたら、それは一生大切にしたいし、とても幸せなこと。箸の大切さを改めて知ることができました。

4〜7.箸の制作工程。目の粗いヤスリから細かいヤスリまで何度も磨き、感覚のみで角度を仕上げていきます。最後に箸の先端まで丁寧に磨き、仕上げカンナをかけ、摺り漆で木目が見えるように仕上げます。8.様々な角度を感覚だけで削っていく竹田さん。1本1本がほとんど同じに仕上がるのが職人技です。9.お店では握って選べるように箸がたくさん並んでいます。10.豆腐箸やらーめん箸、お茶漬丼箸などユニークな箸もいろいろ。







