美味しい食べものGoGo

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美味しくて、体に良い物を探しに旅に出ました。
そんな旅の中で出会った、素敵な食べ物を紹介します。

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第一回 第二回 第三回 第四回
第五回 第六回 第七回 第八回
第九回 第十回 第十一回  

 

 

2013年12月号

一年間、手島奈緒さんに食の安全と農業のあり方を身近に分かりやすくご紹介していただきました。

今回で最終回となります。
農業問題の本を出版され、ますますご活躍です!

おいしいトマトの見つけ方
  1. 雷鳥社から著書「いでんしくみかえさくもつのないせいかつ」を上梓いたしました。
    一か月間遺伝子組み換え食品を排除した経験を、イラスト入の日記形式で書き綴りました。
    楽しく読める工夫をしています。
  2. 1週間ごとに図版で「遺伝子組み換え食品の基礎知識」を紹介しています。洋風の朝ごはんから遺伝子組み換え食品を排除してみると・・・・・?
  3. 日本に入ってきた遺伝子組み換え作物がどんな加工品になっているのかな?
  4. 一か月間排除した遺伝子組み換え食品のチェックリスト。いやー、市販の食品で食べられるものはほとんどありません。

 以前農家周りをしていたときに、ある農家が言いました。「自分たちが作ってる野菜は、誰かが食べて誰かの命になるわけなんだよね。そう思うと変なもの作れないよ」。その人はこうも言いました。
 「自分の作ってる野菜をお金だと思うと、農薬をたくさんかけようが化学肥料を大量に使おうが、全然気にならなくなる。ひとつ100円に見えてしまうとダメなんだ。食べものは命だってことを俺たちも忘れちゃいけないんだよ」

 残念ながら現在の日本では、食べものを命だと思っている人はそれほどいません。前日まで除草剤を散布していい野菜を出荷し、全く疑問に思わない人が多いのが現状です。これは野菜だけではなく、加工品も同じで、それを食べて人が生きていくという意識が薄いから、食品添加物を大量に加えて「ADI値以内だから、食品衛生法を守っているから大丈夫」と言えるのです。
 これは作り手だけの問題でしょうか? 実は消費者にも責任はあります。食べものの価値は現在、価格ではかられています。安価なものが売れれば、メーカーは安価なものを作ります。それを作るために何かを犠牲にしているのですが、消費者には知るすべはありません。
 わたしたちは、食べものがどのように作られているのか、作り手がどんな気持ちで作っているのか全く知らずに食べています。作る人と食べる人の間は全く繋がっていないのです。

 食べものを作っている現場のことを、この一年ご紹介してきました。食べて喜ばれるおいしいもの、安全なものを作りたいから農薬を使わないという農家はまだまだ少数派。でもその人たちのことを知れば、誰もが食べたいと思うでしょう。いつかそんな人たちのものを当たり前に食べられるようになるまで、いろいろなところでお知らせしていきたいと思っています。

「いでんしくみかえさくもつのないせいかつ」

「いでんし くみかえ さくもつ のない せいかつ」 [単行本]
著者:手島 奈緒
価格: ¥ 1,260


2013年10月号

ぶどうの種なし、種ありどっちがおいしい?

秋の果物といえば「ぶどう」。
最近では、種なしの方が
よく見るようになりました。
それでは、
種なしぶどうと
種ありぶどう、
どっちがおいしいでしょう?

おいしいトマトの見つけ方
最近では、種ありデラウェアはワイン用に栽培されています。小粒で種を出すのは面倒ですが種ありデラウェアの方がおいしいのです。

 種が無く粒が小さいのでお子さまにも食べやすいぶどう「種なしデラウェア」。そもそもは種ありぶどうでした。種ありデラウェアは、昭和30年代、収穫前に裂果する性質を持つ非常に作りにくいぶどうでした。これに植物ホルモン剤を利用することで作りやすいぶどうになり、庶民のぶどうとして一世を風靡したのでした。「種なしデラウェアに歴史あり」です。
 さて、昨今はデラウェア以外のぶどうも種なしが全盛です。種がないと子どもが食べやすいことなどから、JAでも市場でも種なしぶどうが推奨されています。でもでも。実は種ありぶどうの方がおいしいことをご存知でしたか?

 種ありぶどうの実を引っ張ると、軸と種をしっかりと結び付けている部品があります。種なしぶどうにはこれがありません。そのため、粒が外れやすいのです。ぶどうの房を手に取ると、ばらばらと粒が外れることがありますが、これは脱粒と呼ばれ、「古い」というクレームにつながるため、ぶどう農家も小売店も非常に気を使います。そして、この脱粒を起こさないようにするために、種なしぶどうは熟度が上がるずいぶん前に収穫してしまうのです。

 ぶどうは熟してなくてもある程度糖度があがる果物。多少早採りをしても大きな影響はないように思えます。しかし樹で熟した種ありぶどうと比べるとその味の差は歴然。香り、味。甘さもコクも、全ての点において種ありぶどうの方が優れているのです。種があると収穫時期が遅くなりますから、そのぶん木についている時間が長いことも大きく影響しています。しかし、種なしぶどうが全盛の昨今、種ありぶどうのほんものの味は忘れられつつあります。
 店頭で種ありぶどうを見かけたら、ぜひ種ありを選んでみてください。種ありぶどうがあるうちに、その味を覚えておきましょう。

おいしいトマトの見つけ方
右上)種と軸をつないでいる部品。種なしぶどうにはこれがありません。
右下)種なしと種ありの差が如実にわかるのがロザリオビアンコ。甘さ、香り、コク。全てにおいて種ありが優っています。
中央)完熟のベリーAは巨峰に優るとぶどう農家が言うほどおいしいベリーA。
左)昨今もっとも種あり率が下がっているのが巨峰。巨峰らしい味や香りは種ありでこそわかるのに。もったいないことですね。


2013年08月号

第九回:おいしいトマトの見つけ方

夏野菜の季節になりました。
旬の野菜は栄養価も高く、その季節の体調を
整えてくれます。
今回は夏野菜の代表である
トマトの見分け方をご紹介します。

おいしいトマトの見つけ方
畑になっているときには緑色がくっきりしているものがおいしいトマトになります。
家庭菜園の場合は5段目くらいまではこの色合いのトマトができるものです。

体内に熱がこもりがちな梅雨から盛夏にかけては、身体を冷やす効果のある果菜類が理にかなっています。冷たいものを食べるより旬の野菜で身体を冷やす方が健康的です。
 夏の野菜の代表選手と言えばトマト。昨今ではスーパーにはいつでもあって旬がわかりにくくなっていますが、トマトが赤くなると医者が青くなると言われるほど有用な成分が多く含まれており、食欲がなくなる夏にぴったり。夏こそたくさん食べたい野菜です。

意外と農薬の多いトマト

 さて、家庭菜園では無農薬で簡単にできるように思えるトマトですが、甘いトマトを作るのは至難の業。そもそもが乾燥していて地力のない南米出身の作物のため、肥料や水のコントロールが意外と難しく、肥料や水が多すぎると水ぶくれでただ大きいだけのおいしくないトマトができてしまいます。「水やり3年」と言われるほどトマト農家は水分コントロールに気を使います。また、病気や虫害も多く、意外と農薬散布数も多いのがトマト。成長しながら実をつけていく生育期間の長い果菜類の宿命です。おいしく安心して食べられるトマトを選びたいですね。

スターマークとグリーンベース

 味がしっかりしておいしいトマトを選ぶコツは、色合いです。まずベースの色がグリーンのもの。軸の周囲に緑色が残っているものは酸味が強いこともありますが、味が濃いトマトです。そして、先端から放射状に星型にラインが出ているもの。このラインがくっきりしているほど、糖度が高くおいしいトマトになります。逆に、おいしくないのは、ピンク色にキラキラしたパールのような光沢があるもの。水分調整を間違ってしまったトマトで、水っぽくおいしくないことが多いのです。
 おいしいトマトをたくさん食べて、元気に夏を乗り切りましょう。

おいしいトマトの見つけ方
左)トマトの葉によく出る病気、葉カビ病。人間で言うと風邪のようなもの。体力が戻るといつのまにか無くなります。
真ん中)夏野菜は夏にこそたくさん食べたいもの。夏向けの身体を作ってくれます。
右)スーパーに行くといろんなトマトがあって迷いますね。おいしそうな色合いのものを探しましょう。

おいしいトマトの見つけ方

  先端から放射状にラインが見えます。
  こういうトマトは糖度が高くおすすめ。


2013年06月号

第八回:あると便利なハーブの使い方

買うと余らせてしまう。
買ってみたのはいいけど、使い方がよくわからない。
でも少しだけあると便利なハーブ。
そんなハーブの使い方をご紹介します。

あると便利なハーブの使い方
〈バジル〉庭先に直植えした方が旺盛に生育します。スペースがあったらぜひバジルを。

初夏から夏にかけてはハーブが旺盛に生育し、この時期の野菜類に相性がいいものが多いことをご存じですか? プランターや庭先の余ったスペースに植えておくと重宝するハーブ類は、食卓に香りという素敵なアクセントを添えてくれます。
意外と簡単なハーブの栽培。ホームセンターなどで苗を見つけたら、庭先やプランターで栽培して楽しんでみてはいかがでしょう。お料理の幅が広がります。

使いやすいハーブ

〈バジル〉  トマトとの相性が抜群。1本あると重宝します。サラダやパスタ、野菜の煮込みに。たくさん作ってバジルペーストに加工すれば一年中楽しめます。
〈パセリ〉 1本あると便利。2年草なので来春に花が咲くまで楽しめます。アゲハの幼虫がつきやすいので見つけたら取り除きます。
〈マジョラム〉 聞き慣れないハーブですが、一株あると重宝します。オムレツ・パスタ・ラタトイユなどに。甘い香りが食欲をそそります。
〈青じそ〉 秋口に出る穂(しその実)を摘んで塩漬けにし、冬の間のお漬物や梅酢にまぶしておにぎりなどに使います。

さらにステップアップ

〈セージ〉  肉の臭み消しに使います。またバターや油を熱する際に入れて香りを移し、肉を焼くだけでおいしく仕上がります。葉っぱの天ぷらもおすすめです。
 栽培はローズマリーと相性がよく、近くにあるとお互いの生育が良くなることが知られています。
〈ローズマリー〉  ポテトサラダのじゃがいもを茹でる時や、魚のホイル焼きに小枝を1本入れると普段の料理がワンランクアップします。肉の煮込み料理にもおすすめ。

ハーブの使い方いろいろ
左上)〈マジョラム〉あまり虫がつかないこじんまりとしたハーブ。2年草なので2年間楽しめます。小さな葉をちぎって使います。
左下)〈ローズマリー〉多年草なので大きな鉢に植えてやると大株になります。小さな花も楽しめます。
右)トマトソースにはオレガノと言われますが、フレッシュバジルを入れると一層おいしくなります。その際はオレガノは入れなくても。

あると便利なハーブの使い方

 〈穂じそ〉最上部に花が咲いているタイミングで収穫。
 アク抜きして塩漬けします。


2013年04月号

第七回:おいしいネギの秘密お教えします

鍋料理に欠かせない「ネギ」。
どんな鍋料理にも無いと物足りない
「影の主役」とも言いたくなるネギですが、
最近のネギ、なんとなくゴリゴリしてて
歯触りが気になったりしませんか?

おいしいネギの秘密お教えしますの回
深谷ネギは昔ながらの品種。売ってるタネもありますが、自家採種している農家もたくさんいます。

立春を過ぎても春支度には少し早くて、まだまだ「鍋料理」が登場する機会は多いもの。しゃぶしゃぶや寄せ鍋などの鍋料理は、材料を切るだけで洗いものも少なく手間いらず。意外と主婦に人気です。
 鍋料理に付きもののネギですが、最近のネギ、何となくゴリゴリしてて歯触りが気になりませんか?
 実はネギの品種、昔と今では少し変わってきているのです。

ゴリゴリするネギの秘密

スーパーに売ってるネギをよく見てください。ピカピカの白い肌がとってもまぶしいですよね。でもちょっと待って。ねぎは土の中でできるもの。泥はどうしたの? 実はあの長ネギ、出荷の前に専用のネギむき機で泥のついた外側の皮を1枚むいているのです。
 しかしその機械、昔ながらの柔らかい品種だとうまく皮がむけません。そのため皮をむきやすいようまっすぐに、空気で皮を一枚シュッとはがしやすいよう皮が硬いものに、品種が変わって来たのです。なんとなくゴリゴリした歯触りがするのはそのせいだったのですね。柔らかいネギでは皮をむくのに手間取るから、「おいしい」よりも「効率」を重視した結果が、ぴかぴかのネギなのでした。

昔ながらの甘く、とろけるネギ

昔ながらの柔らかいネギは病気にかかりやすく、皮をむくには向かないため、一般的ではなくなってきています。埼玉県の深谷ネギや、群馬県の下仁田ネギなど、柔らかく、甘く、とろけるような食感のネギはたくさんあるのですが、現在では付加価値商品となり、主流品種ではなくなりつつあります。作業効率がおいしいネギを駆逐してしまう、少し切ない話です。
 ともあれ、まだまだ寒いこの時期、ネギは寒さに当たってますます甘くおいしくなっています。時には昔ながらのネギで、そのとろける味わいと甘さを楽しんでみてはいかがでしょう。

美味しいネギ
左上)ネギ坊主に花粉を取りに来たミツバチ。
左下)4月に入るとネギ坊主が出てネギは硬くなってしまいますが、これから種を取りだします。
右)昨今主流の一本ネギ。ぴかぴかでまっすぐで扱いやすいので人気です。

まっかなまっかなりんごの秘密

左)この時期の早朝に見られるネギ蜜。
右)ネギの生育には約1年半かかるってご存知でしたか?今食べているネギは去年の秋に種をまいたもの。こんなに細いネギがおひさまと土の力で大きくなるのですから不思議です。


2013年02月号

第六回:まっかなまっかなりんごの秘密

寒い寒いこの時期。
りんごがおいしい季節です。
りんごが赤くなると医者が青くなると言われるほど、
ビタミン・ミネラル類が豊富なりんご。
実はまっかなりんごには秘密がありました。

まっかなまっかなりんごの秘密
しっかりとお尻まで充実して甘くなると、りんごはこういうまるっこい形になります。先細りのりんごは糖度が低いので選ぶときには気をつけて。

りんごがおいしい季節になりました。まっかなりんごは本当においしそう。でもあの色は、実はりんご農家が大変な手間をかけて作っていることをご存じでしたか。その手間暇かかる作業を「葉摘み」と言います。

葉取らずりんごがおいしい理由

最近スーパーで「葉取らずりんご」という、ところどころ赤くないりんごが売られているのを見かけます。「葉取らず」とは、着色管理のための「葉摘み」を最小限に抑えたという意味。りんごは、果実周りの葉を摘み、おひさまに当てることで着色します。簡単に言うと、日焼けさせているのです。
 でも植物って葉っぱで光合成をして栄養を作るんじゃなかった?大切な葉っぱを取っていいの?実はあまり良くありません。葉で作られた糖分は果実に送られるので葉っぱが無いとあまり甘くなりません。だから葉摘みをそれほどしない「葉取らずりんご」は甘くておいしいと言われているのです。

まっかなのに 甘くないりんごができる理由

せっかく茂った葉を摘んでしまうのは、消費者がまっかなりんごを好むため。りんごは赤くないと売れないのです。あかーいりんごの秘密は、りんごを甘くするためではなく色のきれいなりんごを作るためだけに行われている「葉摘み」のおかげだったのです。なんだか変な話ですね。
 そんな中でも、おいしいりんごを作りたいと葉摘み作業を最小限に抑えている農家がいます。そのおいしさは一度食べたら忘れられないほど。もちろん葉っぱだけのせいではありませんが、作物と食べる人に思いをはせることができる農家には、おいしいものを作ることができるのでしょう。
 植物の力というのはすごいもの。その力をじゅうぶんに発揮できるよう育て、作物を作る農家のものはおいしいのです。

青いりんご達
左)昨今黄色いりんごが流行ですが、やはりまっかなりんごほどは売れません。
中)緑色のグラニースミス。赤くしないので葉摘みが必要なく省力化できると注目されています。
右)葉を摘んだ後青い側をくるんとおひさまに向けてやります。これが「玉まわし」。

まっかなまっかなりんごの秘密

左)おひさまに当る側がきれいに色づいています。
右)葉っぱを取ると葉の跡がしっかり残っていますね。この作業が「葉摘み」。


2012年12月号

第五回:山形県のブランド米「つや姫」

山形県のブランド米 「つや姫」のお話です。
一昨年は、米の新品種が続々と発売されました。
中でも、山形県の「つや姫」はその年の
新潟コシヒカリを抜くほどの実力を持っていました。

山形県のブランド米「つや姫」
つや姫の稲穂。ずっしりと重く垂れさがってる豊作の予感。今年は平年作だそうです。味が楽しみですね。

一昨年のこと。山形県が満を持して販売した新品種「つや姫」のデビューは衝撃的でした。まっ白でつやがあり、冷めてもおいしく、お米の粒が大きいのが特徴。その年の新潟コシヒカリの食味を抜くほどの実力でしたが、知名度はいまひとつ。そんなつや姫のおいしさの秘密を探ってきました。

農薬と化学肥料をたくさん 使うとお米はまずくなる?

お米の旨い・不味いは数値で評価できるってご存知でしたか? 「たんぱく含有量」と「食味値」でわかります。「たんぱく質が多い米はおいしくない」というのがお米の世界の常識。肥料が多いと、たんぱく質が増えるため、食味が低下します。また肥料過多は、病気なったり、虫が出るため、たくさんの農薬を必要とします。たくさん収穫したいけれど、「味が悪くなる」のが、農家の悩みです。
 そんな中、山形県では新ブランド「つや姫」のために、画期的な栽培指針と食味の基準を作りました。それが3つのつや姫基準です。
㈰特別栽培米及び準ずる栽培内容であること(地域の防除暦の農薬数50%減、化学肥料(チッソ分)50%減で栽培された農産物)。
㈪栽培期間中の圃場確認が何度か入り、栽培記録の提出を行うこと。
㈫米のたんぱく含有量7.5%以上のもの及び3等以下のものはつや姫として販売してはいけない。

数値化された食味に 裏打ちされたおいしさ

消費者にはピンときませんが農家にとってはハードルの高い基準です。一般栽培で農薬20回のところを10回に。栽培期間中には、地域の普及員がカラーチャートを持って稲の葉っぱの色のチェック。つまり、農薬や化学肥料をたくさん使う人は「つや姫」を作れないということなのです。
 おいしいお米はそれだけでごちそうです。新米とともに、実りの秋を思う存分味わいたいですね。

ぴかぴかのつや姫と、あぜに咲く小さな花
左)あぜに咲く小さな花。美しいですね。
右)ぴかぴかの収穫したてのつや姫。冷めてもおいしいので、まずは塩にぎりでいただきます。

山形県のブランド米「つや姫」、おきたま興農舎代表・小林亮さん。

左)おきたま興農舎代表・小林亮さん。「おいしくて安心して食べられる米」を目指しています。食味値の高いいい米を作ってらっしゃいます。
右)7・8月の降水量は平年の14%という超かんばつだった山形県の内陸部。9月に入って雨続きで稲の刈り取りが遅れました。


2012年10月号

第四回:森田成子さんの完全自然栽培

新規就農4年目の挑戦。
茨城県石岡市に就農した和知祥子さんのお話です。
農家での研修をせずに飛び込んだ農業の世界は、
土壌や天候、虫との間で試行錯誤の連続でした。

完全自然栽培
今年初めての試み。都会から消費者を招き「大豆の種まきから味噌づくりまで」を体験するイベントを開催中。
最後は皆で手前味噌づくりを楽しみます。

2009年に茨城県石岡市に就農した和知祥子さん。北海道の大学を卒業後、有機野菜の宅配会社で約5年間勤務し、その後農業の世界に飛び込んだいわゆる「新規就農者」です。  新たに農業を始める場合、一般的にはどこかの農家で研修をすることが多いのですが、祥子さんは研修をせずに「農」の世界に飛び込みました。「研修よりも実践の方が身につくから」というのが理由。しかし、野菜づくりは一年に一回しか経験することができません。「この日に種をまいたらいつ頃収穫」という目安は、その土地土地によって変わります。少しずつ時期をずらして種をまいても、全部一気に収穫できてしまったり、霜が降りて全滅したり。50アールの畑からスタートした野菜づくりは、試行錯誤の連続。最近ようやく、何をいつ頃まけばどういう状態で収穫できるかわかるようになり、計画的な作付が行えるようになったと祥子さんは言います。


農薬をいっさい使わない、 おいしくて安心な野菜づくり

農薬をいっさい使用せず、有機質肥料のみで野菜を栽培するため、天候や虫などに収穫量が左右されますが、「おいしくて安心して食べられる野菜」を作りたいから農薬などの化学物質は使いません。その野菜は甘くて味が濃く「市販の野菜と全く違う味」とお客様に言われています。自家製のボカシ肥と堆肥で作られた野菜の味は、他と比べられない味。畑の土がいかに野菜のおいしさを作り出すのか、祥子さんの野菜を食べるとよくわかります。  就農4年目の今年、1ヘクタールの大きな一枚の畑を借りることができました。畑の一角に梅を植え、羊を飼い、大豆の種まきから味噌を作る一年を通じた体験イベントを開催しています。羊は祥子さんが大好きな動物。農作業の合間に羊の面倒を見ながら、今日も祥子さんは畑に向かっています。

ひつじのかず君、野菜セット
左)夏から秋にかけての野菜セット。このほかトマトなどが入ります。おいしいと大好評です。
右)草取り要員にひつじを一頭飼っています。名前はかず君。祥子さんが来ると甘えに来ます。

和知祥子さんと冬瓜

左)冬瓜を収穫しました。週一回個人宅に宅配している
野菜セットに入ります。
右)和知祥子さん。何でも自分でやらなきゃいけない農業。女性一人でやるのはいろいろ大変なこともあります。


2012年08月号

第三回:森田成子さんの完全自然栽培

10年間、有機栽培農法を
手がけてきた森田さんは、さらに追求して、
完全自然栽培に切り替え
新たな世界を模索中です。

完全自然栽培
自然そのままの状態で育っていく葉物の野菜たち。自然環境が良いので虫たちも楽しそう。

 緑豊かな熊本県菊池市。「豊かな水と緑、光あふれる田園文化のまち」とキャッチフレーズにあるように、阿蘇外輪山を源流とする菊池川と合志川の恵みあふれる緑豊かな街です。今回取材させて頂いた森田さんが作られる畑も同様に自然豊かな場所にあります。
 森田さんは、10年来有機栽培農法を手がけてきました。「少しでも体に良い物を作っていこう。」という思いから出発したとか。しかし、有機栽培を突き詰めると疑問が湧いてきたといいます。
 「この有機肥料やボカシ肥は、大丈夫だろうか?」「ボカシ肥の原料になる有機肥料は、何を食べていたのだろう。」「化学物質をたくさん食べていたのではないか?」など気になる要素が多いといいます。有機肥料が、土の中で腐ったりして有効な物になっていないのではないかなど。
 そこで森田さんは、一念発起して去年から『自然栽培』に切り替えました。『自然栽培法』とは、まったく農薬や肥料も与えない完全に自然な農法をいいます。ちょうど菊池には、森田さん同様に悩んでいる農家や以前から自然農法に取り組んでいる農業仲間がいて、お互いに刺激しあい相談できる環境にありました。
 森田さん達が取り組んでいる『自然栽培』の特長は、まず雑草となる草を抜いたりしません。雑草は、刈り取った後生えていた場所にそのまま放置します。雑草が、次の肥料になるというわけです。また、虫も害虫という捉え方をせず、同居人という位置づけで共に暮らす存在と考えます。自然や環境に良いものであれば、虫たちも良いものを食しているので気にならなくなったといいます。
 昨今の体に良く、より自然に近い食物が脚光を浴びる中で森田さんが手がける野菜も問い合わせがあったりと需要も広がっていると伺いました。作付け量は、完全無農薬なので多くはないですが、「良いものを提供したい。」という思いが浸透しているようです。


レタスとにんじん
右)レタスです。その場でもいで食べてみました。大変香ばしく野菜本来の味覚があり、忘れていた野菜の味を思い出しました。
左)雑草たちと同居しているニンジン。一見ひ弱に見えますが、しっかりと根を張り、ニンジン自らの力で逞しく根を張っていました。

ハウス、森田さん

右)自然栽培に取り組む森田成子さん。これからの課題は多いと伺いましたが、自信にみちた笑顔はとても爽やかでした。
左)ハウスで栽培されているトマト達。濃い緑色をしていて元気そうです。


2012年06月号

第二回:緒方秀壽さんの無農薬なたね油

今回は、春真っ盛りの
熊本県上益城郡甲佐町。
満開の菜の花畑と
その種からできる菜種油を取材しました。

菜の花畑
南国熊本の温かい日差しをいっぱい浴びて今が満開の菜の花畑。美しい光景です。

 熊本県熊本市から南東へ車で30分ほどに鮎釣りで有名な甲佐町があります。この緑豊かな町は、南北に流れる清流「緑川」をメインとして農業が盛んなところです。
 そんな甲佐町で30年以上も無農薬栽培で、菜種油を手がけているのが緒方秀壽さん。緒方さんは、「食生活の改善から健康な身体を作りたい。」という思いで有機農法・無農薬栽培を始めたそうです。そして10年ほど前に、鉱石を使って活性・分解・甦生をさせる力を持つという「エレン水」に出会い、より本格的に無農薬栽培を手がけるようになったと聞きました。

 菜種油は、昨今の健康ブームに後押しをされるように、需要が増えました。例えば、マクロビオテックでは、有機野菜や無農薬栽培の食材は欠かせませんし、健康志向にとっては、無添加は大事なキーワード。特に、高脂血症、脳血栓、動脈硬化などを引き起こす動物性脂肪中心の生活から植物性脂肪への生活改善は重要です。緒方さんが作る菜種油は、無農薬・無化学肥料・無添加。そして上質な一番搾りだから大人気です。

 しかし、菜種油は、作付け面積に対して採れる量がとても少ないのです。6反の菜の花畑に対して、一升瓶でたったの80本しか作れません。だから、高齢化などの影響で休耕地となった場所を借り受け、美しい菜の花畑にしました。さらに町を流れる緑川沿いも菜の花畑にすれば、景観も良いし、街作りに一役買えます。

 菜の花の時期が終わると、今度は、ひまわりを植えます。ひまわりの種は、素晴らしい「ひまわりオイル」になりました。「ひまわりオイル」は、オレイン酸・ビタミンEを豊富に含む健康食用油です。ドレッシングやカルパッチョには、欠かせないオイルとして方々から評判です。  機械化一辺倒の農業の時代にあって、コツコツと手作業にこだわる緒方さん。そのひとつひとつ丁寧に作りあげる姿勢が、人気の秘訣なのでしょう。


菜の花とキンカン
右)可愛くて黄色い菜の花。
左)近くには、無農薬キンカンを栽培している農園もありました。

なたね油、緒方さん

右)菜種油を手に持つ緒方さん。無農薬栽培の技術を活かして、近隣の小学校や中学校で、プールや川の浄化のためにEMぼかしを教えたりしています。また、近くの道の駅で「ごはんよ」というお店を開き、地域貢献にもつとめているとお伺いしました。
左)これが、無農薬・無化学肥料・無添加の菜種油。一番小さい小瓶が、ひまわりオイル。


2012年04月号

第一回:福田さんの無農薬みかん

今回は、温暖な九州。
熊本県は、東シナ海に面した天草の果樹園です。
南国の暖かな日差しの中で育った無農薬のみかんです。

田園
2月が食べ頃の晩柑。ザボンの一種。比較的遅くなって出来るのでこの名前がついたといいます。

 隠れキリシタンで有名な天草。この天草の東側にある福田果樹園を訪ねました。黒潮がぶつかるとても温暖な地域です。日当たりの良い丘陵地にみかん畑は広がっています。福田果樹園のご主人である福田智興さんは、全く除草剤などの農薬を使わない完全な「無農薬みかん」を作っています。

 福田さんは、現在34歳。お亡くなりになったお父様から果樹園を引き継いで9年目になります。「果樹園を引き継いだ途端に父が他界しました。何にも分からずこの世界に入ったので、どうやってみかんを作っていくのか試行錯誤の日々でした。」と語る福田さん。農協の指導のままに肥料や農薬を購入し、やってみたところ大凶作になったそうです。「まだ、農薬の使い方すら知らず、悪戦苦闘の日々でした。」と福田さん。それでも年々作り方を勉強し、少しずつ収穫が増えたといいます。減農薬にも挑戦し始めて、そこそこ軌道に乗ってきました。

 そんな折りお客様から頂いた手紙に「うちの子供が、みかんが大好きで皮ごとかじって食べてます。」とあり、福田さんは驚いたそうです。「農薬を散布しているみかんなのに大丈夫か。身体に良くない物を作っているのではないかと自問しました。」と福田さん。

 それからは一切農薬を使わないみかん作りに取り組みました。虫が発生したら、自然農薬といわれるニンニク酢や唐辛子酢などを使い分ける農法にしたそうです。  無農薬に切り替えてみてからは、みかんの木が枯れてしまったり、収穫高が減ってしまったりと様々な変化があったそうです。しかし、「体に良い物を作っている」という思いが農作業を突き動かし、次第に収穫も多くなったといいます。さらに「本当に美味しいみかんだ。」という評判で年ごとにファンが増え、今では一般の流通に流すのは、お付き合い程度のほんの少し。「福田果樹園のみかんしか食べない。」というお客でいっぱいだと伺いました。


大葉となす
左)無農薬のみかんの木。ひとつひとつ包んで甘さを育みます。
右)福田果樹園オーナーの福田智興さん。手に持っているのは、特大の晩白柚(ばんぺいゆ)。熊本特産の大きなみかんです。酸味と甘味が絶妙のみかん。

農家の方々

左)みかん畑。無農薬のみかんの木がいかにも元気に育っています。
右)福田さんは、みかんジュースやみかんの蒸留水を作っています。この蒸留水をベースに肌にやさしい化粧水や石鹸など身体に良い加工品を手がけています。


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